「できるだけ早く痩せたい」と思ったとき、最初に食事を減らそうと考える人は多いと思います。朝食を抜き、昼はサラダだけにして、夜もできるだけ食べないようにする。数日続ければ体重計の数字は確かに動きますし、体重が1kg、2kgと減っていけば、「やっぱり食べなければ痩せるんだ」と感じるのも自然なことです。
ただ、そこで一度考えてみてほしいことがあります。あなたが本当に欲しいのは、体重計に表示される数字でしょうか。それとも、鏡を見たときに「前より身体がきれいになった」「この服を着た自分が好きだ」と思える見た目でしょうか。
この二つは、似ているようで同じではありません。
食事量を大きく減らせば、体重を落とすこと自体はできます。そもそも体脂肪を減らすためには、長い目で見れば摂取するエネルギーより消費するエネルギーの方が多い状態を作る必要があります。ですから、「たくさん食べたまま何もしなくても、都合よく脂肪だけが減る」という話ではありません。
問題なのは、「体重を減らしたいなら、食べる量は少なければ少ないほどいい」と考えてしまうことです。
ダイエットを始めたばかりの時期は、食事量や糖質量が減ったことで体内の水分量が変わり、短期間で体重が大きく動くことがあります。そこで数字だけを見ると、まるで脂肪が一気に落ちたように感じますが、実際には身体の中で減っているものは脂肪だけではありません。
さらに極端な食事制限を続ければ、脂肪だけを都合よく残して筋肉を守ることも難しくなります。体重計の上では、脂肪が減っても筋肉が減っても同じ「マイナス1kg」です。しかし、鏡に映る身体として考えると、この二つはまったく同じではありません。
ここを理解しないまま体重だけを追い続けると、「体重は落ちたのに、思っていた身体にならない」ということが起こります。
体重が減ったことと、脂肪だけが減ったことは同じではない
ダイエットを始めて数日で体重が大きく減ると、とても嬉しくなります。昨日より600g減っている、1週間で2kg落ちた。数字として結果が出るので、「このやり方は正しい」と思いたくなります。
ただ、人の体重は体脂肪だけでできているわけではありません。身体の中には水分もありますし、筋肉や臓器、骨、消化管の中に残っている食べ物などもあります。食事量や糖質量が変われば体内の水分量も動きますから、短期間の体重変化をそのまま脂肪の増減だと考えるのは無理があります。
ダイエットをしていると、「昨日より500g増えた」と落ち込む人がいますが、その500gすべてが脂肪というわけではありません。前日の食事内容、塩分、水分、便通、食事をした時間などでも数字は簡単に変わります。
反対に、一晩で1kg減っていたからといって、寝ている間に脂肪が1kg消えたわけでもありません。
体重計は便利な道具ですが、その数字だけでは身体の中で何が起きているのかまでは分からないのです。
それでも毎朝体重だけを見て、「減っていれば成功、増えていれば失敗」と判断していると、少し増えただけで食事を減らしたくなります。前の日に普通に食べただけなのに罪悪感を持ち、「今日は朝を抜こう」「夜は何も食べないでおこう」と帳尻を合わせ始めると、ダイエットは身体を整えるためのものではなく、食べることを罰する行為に近づいていきます。
本当に見たいのは、一日単位の数字ではなく、数週間、数か月という時間の中で身体がどう変わっているかです。
本当に見た目を変えたいなら、筋肉まで減らしてはいけない
食事量を減らして体重を落とすとき、多くの人は「脂肪が落ちている」と考えます。しかし、摂取エネルギーを極端に減らし、身体を動かす習慣もなく、筋肉を維持するための栄養も十分に取れていない状態では、筋肉を保つことは難しくなります。
ここが、ただ体重を落とすダイエットと、身体を作るダイエットの大きな違いです。
たとえば、お尻を小さくしたいと思っていた女性が、食事を大幅に減らして5kg痩せたとします。確かに身体全体は小さくなりますが、お尻の丸みまでなくなり、横から見ると以前より平らになってしまうことがあります。
本人が欲しかったのは、単に小さい身体ではなく、ウエストがすっきりしていて、お尻には適度な丸みがあり、服を着たときにきれいなラインが出る身体だったかもしれません。
そう考えると、「何kg落とすか」だけを目標にするのは少し違います。
身体の形を作っているのは脂肪だけではなく、筋肉も含めた全体のバランスです。ヒップには臀部の筋肉がありますし、背中や肩、脚にもそれぞれ身体のラインを作る筋肉があります。同じ身長、同じ体重でも、筋肉量や体脂肪の割合が違えば見た目は変わりますし、姿勢が違えばさらに印象は変わります。
だからこそ、見た目を変える目的でダイエットをするなら、「どれだけ軽くなったか」だけではなく、「何を落として、何を残したいのか」を考える必要があります。
体重が5kg違っても、見た目の差がそれほどないこともある
ダイエットをしている人の中には、「50kgになればきれいになれる」「あと3kg落としたら自信を持てる」と、特定の体重を一つのゴールにしている人がいます。
もちろん目標を持つこと自体は悪くありません。数字がある方が分かりやすいですし、進捗も確認しやすいでしょう。
ただ、その数字になった自分が本当に理想の身体になっているとは限りません。
たとえば、55kgから50kgまで食事制限だけで体重を落とした人と、55kgから53kgまでしか落ちていなくても筋力トレーニングを続けながら体脂肪を減らした人がいたとします。体重だけを見れば前者の方が大きく痩せていますが、鏡で見たときに後者の方がウエストやヒップ、背中のラインが整って見えることは十分にあります。
人は他人を見るとき、体重を知ってから「この人はスタイルがいい」と判断するわけではありません。街ですれ違った女性を見て、「52kgくらいだから魅力的だ」と考える人はいないでしょう。
実際に見ているのは、服を着たときのシルエットや姿勢、身体のバランス、歩き方、表情などです。
それなのに、自分自身を評価するときだけ体重計の数字を絶対的な基準にしてしまう人は少なくありません。
本当に変えたかったのは、数字ではなく鏡に映る自分だったはずです。
そう考えると、体重計は便利ではあっても、自分の努力を採点する唯一のものではないと分かります。
「食べないと代謝が壊れる」という話でもない
極端なダイエットについて調べていると、「食べなさすぎると身体が飢餓モードになって、何をしても痩せなくなる」という説明を目にすることがあります。
こうした表現は分かりやすい反面、少し大げさです。
体重が減れば、以前より小さくなった身体を維持するために必要なエネルギー量も変わりますし、減量が続く中で身体がエネルギー消費を抑える方向へ適応することもあります。しかし、「数日食べなかったから代謝が壊れて、もう痩せなくなる」というような単純な話ではありません。
むしろ、現実のダイエットで問題になりやすいのは、極端な方法を長く続けられないことです。
朝からほとんど食べず、仕事中も空腹を我慢し、夜になって帰宅した頃には食べ物のことばかり考えている。そこで我慢できずに大量に食べてしまい、翌朝になると「昨日食べたから今日は減らそう」と、また食事を抜く。
こうした生活を繰り返していると、食べることそのものがストレスになっていきます。
しかも、エネルギーが足りない状態では身体を動かす元気も出にくくなります。運動しようと思っていたのに疲れて何もしたくなくなり、普段の生活でも無意識に動く量が減っていくことがあります。
それでも本人は、「食べていないのに痩せない」と感じるかもしれません。
こうなると、さらに食事を減らす方向へ進みがちですが、必要なのは我慢を強くすることではなく、続けられる方法に戻すことです。
「食べないことを頑張る」ダイエットは長く続かない
ダイエットは、短期間だけ身体を変えれば終わりではありません。
結婚式や撮影など、明確な期限がある場合は一時的に体重を落としたいこともあるでしょう。ただ、普段の生活の中で自分の身体を整えたいのであれば、その後も続けられる方法でなければ意味がありません。
3か月間だけ炭水化物をほとんど食べず、毎日空腹を我慢して10kg落としたとしても、4か月目から元の生活に戻れば身体も少しずつ戻っていきます。
これは「リバウンドした人の意志が弱い」という話ではありません。
そもそも3か月しか続けられない生活を選んでいたのであれば、終わった後に戻るのはある意味当然です。
むしろ最初から、「この食事なら仕事をしながらでも続けられる」「友人と外食する日があっても戻せる」「週に数回なら運動を続けられる」という範囲を探した方が、結果的には身体を維持しやすくなります。
ダイエットという言葉を聞くと、何か特別な期間に感じる人もいますが、本当は生活そのものです。
体型は、数週間だけの努力ではなく、それまで続けてきた食事、運動、睡眠、活動量の積み重ねによって作られています。
であれば、これから作る身体も、普段の生活を少しずつ変えて作る方が自然です。
「食べながら痩せる」は、好きなだけ食べるという意味ではない
「食べないダイエットはやめよう」と言うと、反対に「じゃあ食べても痩せるんですね」と受け取られることがあります。
もちろん、好きなだけ食べ続ければいいという話ではありません。
体脂肪を落としたいのであれば、食事量の調整は必要です。
ただし、調整することと、食事そのものを削ることは違います。
朝を抜いて昼もほとんど食べず、夜だけ空腹に耐えられず大量に食べるより、朝昼夜である程度食事を分けた方が続けやすい人もいます。肉や魚、卵、大豆製品などからタンパク質を取り、野菜や果物、主食なども含めて食事を組み立てた上で、全体の量を少しずつ調整していく方法もあります。
ここで大切なのは、「食べ物は太るものだから減らす」という考え方から、「身体を作るために何を食べるか」という考え方へ変えることです。
身体は、食べたものを材料にして作られています。
筋肉も、肌も、髪も、何もないところから突然作られるわけではありません。
見た目をきれいにしたいのであれば、ただ身体から何かを減らすだけではなく、身体が必要としているものも入れていく必要があります。
女性は体重だけではなく、身体の変化にも注意してほしい
特に女性の場合、食事量を極端に減らした状態が長く続くことには注意が必要です。
運動量や日常生活で使うエネルギーに対して食事から入ってくるエネルギーが少なすぎる状態が続けば、身体はさまざまな部分に影響を受けます。月経周期が乱れたり、強い疲労感が続いたり、立ちくらみなどの体調変化が出たりすることもあります。
それでも、「痩せるためだから仕方ない」と我慢してしまう人がいます。
でも、月経が止まるほど頑張った、めまいがするほど食べなかったというのは、ダイエットの成功ではありません。
きれいになりたくて始めたことが、健康を崩す方向へ進んでいるのであれば、一度やり方を見直す必要があります。
特に体調の変化が続いている場合は、インターネットの記事だけで判断せず、医師や管理栄養士などの専門家へ相談することも大切です。
健康と見た目は、別々のものではありません。
疲れ切った状態で体重だけ軽くなることが、本当に目指していた身体なのか。一度考えてみる価値はあります。
身体を変えるなら、食事制限だけではなく筋トレも使う
見た目を変えたいのであれば、筋力トレーニングはかなり有効な選択肢です。
だからといって、毎日ジムへ行く必要はありませんし、重いバーベルを持ち上げてボディビルダーのような身体を目指す必要もありません。
大切なのは、「体重を落としながら、残したい筋肉を残す」という考え方です。
たとえば女性であれば、ヒップの形を整えたい、背中をすっきり見せたい、脚のラインを変えたいという希望があるかもしれません。
その場合、食べないことで身体全体を小さくするより、必要な食事を取りながら筋肉に刺激を入れた方が、自分の欲しいシルエットに近づける可能性があります。
体重は思ったほど減らないかもしれません。
でも、パンツを履いたときのヒップラインが変わったり、ウエストがすっきり見えたり、肩や背中のラインが整ったりすれば、本人が欲しかった「痩せた感じ」はそちらにあるかもしれません。
ここまで来ると、ダイエットは単なる減量ではなく、ボディメイクになります。
この考え方を持つと、体重計の数字だけに振り回されにくくなります。
写真を撮ると、体重計では見えない変化が分かる
毎日鏡を見ていると、自分の身体の変化には意外と気づきません。
少しずつ変わっていくからです。
そこで、見た目を変える目的でダイエットをしているなら、一定期間ごとに写真を残す方法があります。
同じ場所で、できるだけ同じような服装と姿勢で撮影しておくと、1か月、2か月と経ったときに比較できます。
体重が2kgしか変わっていなくても、写真ではウエストや背中、ヒップのラインがかなり変わっていることがあります。
反対に、体重は5kg落ちているのに、本人が期待していたほど身体のラインが変わっていないことに気づく場合もあります。
どちらも大切な情報です。
体重計は身体を一つの数字にしますが、写真には身体の形が残ります。
見た目を変えることが目的なら、写真や服のサイズ感、鏡での印象なども含めて判断した方が、自分の変化を正しく見やすくなります。
恋愛や婚活のために痩せたいと思うことは悪くない
「好きな人にきれいだと思われたい」「婚活を始める前に少し痩せたい」と考える人もいると思います。
私は、その気持ち自体を否定する必要はないと思います。
恋愛では見た目も一つの要素ですし、自分の身体に自信が持てるようになれば、人と会うことにも前向きになれるでしょう。
ただ、だからといって、誰かに選ばれるために身体を削り続ける必要はありません。
実際に相手が会うあなたは、体重計の上に立っているあなたではありません。
服を着て、歩き、話し、笑っています。
見られているのは、身体のサイズだけではなく、姿勢や表情、服の似合い方、その人全体から受ける印象です。
そう考えると、「あと3kg減らさなければ恋愛できない」という考え方が、本当に正しいのか疑問が出てきます。
もちろん、自分が納得する身体まで整えてから婚活を始めたいという人もいるでしょう。それも一つの考え方です。
ただ、体重が目標に届いていないからという理由だけで恋愛を先延ばしにする必要もありません。
身体づくりは続けながら、人とも会えばいいのです。
目指したいのは「一番軽い身体」ではなく、「自分が好きな身体」
ダイエットには、終わりが見えなくなることがあります。
55kgから52kgになったら、次は50kg。50kgになったら、あと2kg落としたくなる。数字だけを追い続けると、「どこまで痩せれば満足なのか」が分からなくなってしまいます。
そこで一度、体重ではなく見た目を基準に考えてみてください。
どんな服を着たいのか。どんな身体のラインになりたいのか。今より少しお尻を丸くしたいのか、ウエストをすっきり見せたいのか、それとも単純に体力をつけて健康的に過ごしたいのか。
目標が変われば、やることも変わります。
体重だけなら食事を大きく減らせば短期間でも動きます。しかし身体の形を変えるには、食事だけではなく、運動や睡眠、時間も必要になります。
少し遠回りに見えるかもしれません。
でも、半年後に身体が変わり、その生活をさらに一年続けられているのであれば、1か月だけ極端に痩せて元に戻るより、結果として近道だったと言えるのではないでしょうか。
まとめ
「痩せたいから食べない」という考え方は、とても分かりやすいものです。食べる量を減らせば体重が動くこともあるので、結果が出ているようにも見えます。
ただ、見た目を変えたいのであれば、体重が減ったという事実だけでは足りません。
その体重の中で、脂肪がどう変わったのか、筋肉をどれだけ残せたのか、身体のラインはどうなったのか、そして自分自身がその身体をどう感じているのかまで見てほしいと思います。
食事を整えることは必要です。
でも、食べないことを競う必要はありません。
身体を作るために必要なものを食べながら、余分な体脂肪は少しずつ減らし、筋肉をできるだけ残す。そのうえで、自分が欲しい身体のラインに合わせてトレーニングを続けていく。
そうすると、ダイエットの目的が「何kgになったか」から「どんな身体になったか」へ変わっていきます。
体重計で過去最低の数字を見ることより、鏡を見たときに「前よりこの身体が好きだ」と思える方が、あなたが本当に欲しかった結果なのではないでしょうか。
痩せるために自分の身体を削るのではなく、自分がこれからも付き合っていく身体を育てていく。
その方が、ダイエットはずっと長く続くし、見た目も、その後の生活も変わっていくと思います。